空港では飛行機の運航を支えるため、たくさんの「車」が働いています。
その姿はまさに、縁の下の力持ち!
だからこそ、いつも飛行機の陰に隠れてしまい、着目されることは少ないんですよね。
そこで今回は、以前実施した投票「あなたの好きな空港で働く車はどれ?」 の結果発表と併せて、「空港で働く車」について解説します。
「空港で働く車」人気投票で見事1位に輝いたのは、見かけによらず馬力がすごい!「トーイングカー」でした!
トーイングカーは、飛行機の地上での移動を助ける乗り物です。
たとえば、駐機場から誘導路の所定の場所まで移動するときは、トーイングカーが飛行機を押し出します。これは、飛行機がエンジンの推力で走行しており、バック(後退)することができないためです。ほかにも、駐機場から別の駐機場へ移動するときなど、お客さまが搭乗していない飛行機を移動させる際にも、トーイングカーでけん引します。
ちなみに、トーイングカーには大きく2種類あり、rinoさんが投稿してくれたトーイングカーは飛行機とトーイングカーをつなぐ“トーバー”を使用せず、車体と飛行機の前輪を直接つなぐトーバーレストーイングカーです!
こんなに小さな車体なのに飛行機を押し出したり引っ張ったりできるなんて!と驚いてしまいますよね。
実は飛行機と比べると小さく見えますが、トーイングカーの重量は50.5トン!飛行機の重さの4分の1から6分の1の重さですが、アジアゾウのオス約10頭で飛行機を押している姿を想像すると……うーん、できそう!(かな?)
JALグループでは、社内で訓練を積み、特定の資格を取得したスタッフのみがトーイングカーを運転し飛行機を動かすことができます。言うまでもなく安全第一ですが、飛行機に乗っていただいたお客さまに快適に過ごしてもらうため、飛行機に不要な振動を与えないよう細心の注意を払って運転しています。
離陸前のプッシュバックでは、ぜひ陰ながら飛行機を動かすスタッフを想像してみてください!
あの小さな車のどこにあんなパワーがと思ってしまいます(鈴木 淳 さん)
機体をプッシュバックしてる事に気づかない時もある位スムーズな技術。 手を振って見送る姿に毎回涙ぐんでしまいます。悪天候や猛暑時、別の作業に移った方が効率的なのに… フライト時「最後に見送ってくれる方々」にいつも感謝しています。(Barca405 さん)
2位にランクインしたのは、つないだコンテナを運ぶ「トーイングトラクター」!
JTAで使用しているピンクのさくらジンベエ柄のトーイングトラクターは必見です!
トーイングトラクターは、空港でお預かりしたお客さまのお荷物やそのほかの貨物を載せたコンテナを運ぶ車です。車両の重さは約3.5トンで、飛行機をけん引するトーイングカーよりコンパクトな見た目です。屋根があるタイプとないタイプがありますが、運転席からの死角をなくすためにJALでは屋根なしを採用しています。
コンテナといえば、約7,000台ある国内用コンテナのうち、たった1台だけ黄色のコンテナがあることをご存知ですか?出合う確率はかなりレアなので、「幸せの黄色いコンテナ」と呼ばれ、皆さんに親しまれています。
もしかすると黄色いコンテナが運ばれているかも……?空港で外の景色を見られる際は、ぜひコンテナを運ぶトーイングトラクターの姿をご覧くださいね。
何両にもなるコンテナを運ぶには内輪差を考えつつ走るのだろうなと思うとカッコいいだけでなく技術も必要と思ったので。(miyazaki さん)
動きが可愛いかぁと また、預けた荷物を大切に運んでくれてるので(^^)(ERINA_s2 さん)
3位に選ばれたのは、飛行機に付着した雪を落とすのに使われるデアイシングカーでした。
雪が積もる地域の空港をよく利用される方は見たことがあるかもしれません。
デアイシングカーも作業場所の屋根付き・屋根なしの2種類あり、その形状から「エレファントミュー(屋根なし)」と「エレファントベータ(屋根付き)」と呼ばれています。
飛行機の翼などに雪・氷・霜が付着していると揚力(航空機を垂直に浮かせる力)が弱まるため、離陸前に除去する作業が必要になります。すでに付着した雪・氷・霜を取り除くことを「デアイシング」(De-Icing)、付着や再氷結を予防することを「アンチアイシング」(Anti-Icing)と言います。ただのお湯ではなく、防除雪氷液という液体を機体にかけるのですが、融雪・防氷など用途によって濃度や種類はさまざま。離陸時間と防除雪氷液の有効時間を常に考慮し、計算しながら作業にあたっています。
エレファントミューは除氷液のノズルを自分で動かせるため作業がしやすく、エレファントベータは操縦席でロボットを操っているような体験ができます!
また寒いところでの活躍が目立つデアイシングカーですが、2019年には台風19号の影響で道路が冠水した地域へ出張し、道路洗浄の作業でも活躍しました。車両特性を活かしてさまざまな分野で活躍できるのも、デアイシングカーの醍醐味です。
デアインシングカーはどこの空港にも絶対にある働く車じゃないので好き。 極寒の中、一生懸命働く姿にいつも萌え~です。(kawamasu さん)
寒冷地のスムーズな運航に欠かせない縁の下の力持ち的な役割(ruriking さん)
4位は、お客さまが飛行機に搭乗するときのご案内役「パッセンジャーステップカー」!
横から見ないとわからないので、このステップが車だったことを初めて知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?また来日した有名人がステップの上で手を振る様子などを、写真や映像でご覧になった方も多いと思います。
JALではパッセンジャーステップカーの代わりに、パッセンジャーボーディングブリッジというターミナルと飛行機をつなぐ可動式の搭乗橋を使ってご搭乗いただくのが一般的なので、実物を使ったことがない方もいらっしゃるかもしれません。
ステップカーを使うときの魅力はなんといっても、飛行機を間近に見られること!普段はなかなか見ることができないエンジンも近くで見ることができます。
ステップカーを装着する際は、細心の注意が必要です。飛行機胴体にステップカーが接触しないように、装着面の手前では一旦停止するなど安全確認を実施し装着しています。わずかな隙間を残して装着するには細かな技術力が求められます。
もしステップを使ってご搭乗いただく、または飛行機から降りていただく際は、ステップを支える車の存在を思い出していただければ嬉しく思います。
日本だとあまり出番がないパッセンジャーステップカー アジアでは出番が多いですよね 年末か年始にメルボルンから帰ってきた時、初めて成田でお世話になり、なぜかアガりました 「え、JALなのにステップ〜」って。(Ai Minato さん)
空港で私たちが利用できる唯一の飛行機以外の乗り物だから(paldai さん)
#2019年の思い出 それは空港見学
関空や伊丹で見学したことにより
空港で目に留まるもの、楽しみが変わりました
成田空港では
実際にリフトで上げられた機内食のコンテナが飛行機に
5位は、機内食やドリンク類の入ったコンテナを運搬し、飛行機に搭降載する車「フードローダー」です。
国際線では、1便に対して2台のフードローダーで機内食や機用品を運搬し、搭載しています。
一見するとコンテナが浮いているように見えますが、下で支える車がいますね。
この車で4トンの荷物をビルの3階くらいの高さまで持ち上げることができるんです!ちなみに、重量は普通車両20台分くらいあります。
コンテナの大きさは長さ7.5m 幅2.4m 高さ2.1mで、1便あたりに運搬する機内食やドリンク類は、カート約40~50台分ほど! 機内食の衛生状態を保つため、コンテナ内は冷蔵庫機能がついています。
飛行機に接着するときは、コンテナの足場(プラットフォーム)が油圧で伸縮し機体ギリギリまで接近します。駐機中の飛行機で作業をしているフードローダーを見つけたら、その動きに注目してください!
機内食好きの私にとって、フードローダーは欠かせません^ ^(azu2hr さん)
ほかにも「フォローミーカー」や「ランプバス」、「レヒューラー式タンクローリー」などを挙げてくださった方もいらっしゃいました。今回紹介した車以外にも、空港ではたくさんの車が働いています。
この記事をきっかけに、空港で働く車についても興味をもっていただけたら嬉しいです!
今後は特集コラムの「仕事の舞台裏」シリーズで、特殊車両を操縦するスタッフを取り上げるかも!?
空港で気になる車を見かけた方は、ぜひtricoに投稿してくださいね♪