EU加盟国やアジアなどで買い物をしたとき、代金に含まれる税金(付加価値税)を帰国時に取り戻せることがあります。ところが、日本人旅行者のなかには付加価値税やその払い戻し手続きについて知らないために損をしている人が少なくありません。そこで、ここでは付加価値税を払い戻す方法についてわかりやすく解説します。
付加価値税(VAT)とはvalue added taxの略で、EUやアジア諸国で買い物をしたときに発生する税金のことです。日本の消費税のようなもので、国によって税率が違います。たとえば、イギリスの場合は20%です(2019年1月時点)。EU圏内やアジアの国内で消費される物品やサービスにかかってくるものなので、日本で使う目的で買ったものは課税の対象外となり免税される仕組みです。そのため、ホテルの宿泊費やタクシー代などのように現地で消費されるものは免税されません。一方、お土産など日本で使用するものは免税対象となります。
日本からEUやアジア諸国へ旅行に行って買い物をする場合なら、一定以上の金額を支払ったとき払い戻しが受けられると考えて良いでしょう。問題は「一定以上の金額」がいくらなのかという点です。払い戻しの手続きを進めるためには、買い物をした店舗からVAT還付申請用紙(VAT FORM)をもらわなくてはなりません。イギリスの場合なら50ポンド以上の買い物をしたときに用紙がもらえるのが基本ですが、店舗によってその扱いはさまざまです。個人経営の小さなショップなどではそもそも還付手続きを扱っていないケースもあるため、買い物をする前に確認しておきましょう。
また、付加価値税は還付申請をしても全額還付されるわけではありません。国によって還付率(リファンド率)が違い、もともとの付加価値税率が低い食品などの物品では還付率も低く設定されているのが一般的です。
付加価値税の還付では、払い戻しの対象になるものとならないものがあります。ネットで購入したものや輸出承認書を必要とする品物などは払い戻しの対象外です。書籍や14歳未満の子供服など、そもそも付加価値税がかかっていない物品がある点にも注意しましょう。また、本来は免税対象でも開封してしまうと国内で消費したことになるため、対象外になる可能性が出てきます。
払い戻しを受けるためには3つの条件を満たさなくてはなりません。1つは物品を購入したエリア外に居住していることです。EUの場合なら、それを証明できる旅券やビザ、その他関連文書を税関に提示することが求められます。2つ目は購入した物品を3か月後の月末までにエリア外に持ち出すことです。たとえば、1月1日~31日のあいだに購入した品物なら4月30日までにエリア外に持ち出す必要があります。3つ目の条件は、VAT還付申請用紙(VAT FORM)があることです。店舗でもらった用紙を空港に持っていって、還付の申請手続きをする流れになります。
たとえば、EU圏内で買い物をする場合についてみていきましょう。まずは、店舗で買い物をしたらVAT還付申請用紙を要求して、その場で氏名や住所、パスポート番号などを記入します。還付予定額を店舗の人に記入してもらって、用紙を受け取りましょう。この用紙を出国時最後に利用する空港の専用カウンターに持っていき還付手続きを進めます。還付手続きにおいては購入した物品を実際に提示するのが基本なので、購入したものを預け入れ手荷物にしたい場合はチェックインの前に還付手続きを済ませることが大切です。手荷物として持ち込むならチェックインの後に手続きしても問題ありません。カウンターでVAT還付申請用紙に承認のスタンプがもらえたら、返金手続きに進みます。
返金方法は大きく3通りあり、クレジットカードによる返金と現地通貨での返金、小切手による返金のどれかが選べます。小切手や現地通貨で還付を受けると、日本円にするとき手数料がかかるのでクレジットカードによる返金がお得です。税関に設置された専用のポストにクレジットカード番号を記入した用紙を投かんすれば手続きは終了です。通常2か月程度で返金されるでしょう。
空港の付加価値税還付カウンターは混んでいることも多く、日本人旅行客は付加価値税の払い戻し申請をあきらめがちです。付加価値税の還付について知らない人や忘れてしまう人も少なくありません。還付の手続きによってかなりのお金が戻ってくることもあるため、受けられる払い戻しは忘れずにきちんと受けることが大切です。店舗でVAT還付申請用紙をもらうことを習慣づけて、お得に買い物を楽しみましょう。
(本記事の内容は2019年2月現在の情報です)