特集コラム
2019/11/22

JAL機内食の舞台裏に迫る!総料理長に開発秘話を聞いてみた

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国際線に乗るときの一番の楽しみと言ってもいい、機内食!

普段と違った環境で食べるだけあって、旅の印象にも残りますよね。
ところで機内食のメニューは、どのように決められているかご存知ですか?

今回は機内食が提供されるまでの舞台裏を探るべく、ジャルロイヤルケータリング株式会社 総料理長の浜 信彦シェフにお話を伺いました。

浜シェフにこっそり教えてもらった、今だから話せる裏話もお伝えしていきます!

メニューの検討は約1年前から!旬の食材を使って試作

ーー機内食のメニューはどのように決まるのでしょうか?

当社が単独で作る通常メニューと、外部の有名シェフが監修を行うメニューの2種類があり、それぞれ決め方が異なります。

エコノミークラスの通常メニュー

通常メニューの場合は、機内でお客さまにご提供を始める約1年前から企画会議を行います。

路線ごとにコンセプトが異なるので、担当シェフはコンセプトに合わせたメニューを考え、試作を繰り返します。最初の関門は、試食を兼ねたジャルロイヤルケータリング社内でのプレゼンです。「もっとこうしたほうが、インパクトがあるんじゃないか」といった先輩シェフたちからのアドバイスをもとに改良を重ね、 最終的には機内食などのJALの商品・サービス開発を取りまとめている担当者と確認し、決定します。

エコノミークラス監修メニュー

監修メニューの場合も、ご提供開始の1年くらい前に監修先からメニューの提示があるので、それを私たちが機内食として再現し、監修先にプレゼンします。お互いに納得がいくまで、何度も試作を繰り返すので、メニューが固まるまでにかなりの時間がかかりますね。

ーー準備が始まるのは提供開始の約1年前なのですね!

1年前にメニューを決めているのは、実際に機内食を提供する季節と試作をつくる季節がずれてしまうと、使用する食材が手に入らなくなってしまうからです。今から1年先のメニューを考えるのであれば、同じ時期に出回っている野菜やフルーツなどを使えますよね。

食材選びの観点では、できるだけ安定して手に入る食材を使用しています。
食材が手に入らなくなり、他の食材で代用せざるをえなくなると、お客さまがご覧いただくメニューの写真と異なってしまいます。

メニュー写真を見てお料理を楽しみにしているお客さまもたくさんいらっしゃるので、その期待を裏切らないためにも安定供給が可能な食材選びはとても大切です。

ーー普通のレストランと機内食とでは、調理の面でどのような点が異なるのでしょうか?

いろいろとありますが、ひとつは火加減です。例えばフィレ肉のステーキなら、機内で温め直すときに火が通ることを考えて、機内に運び入れる時点ではベリーレアの状態にしておきます。

あとは味付けです。機内では乾燥と気圧の関係で、旨味や香りを感じにくくなるといわれています。なので、通常よりも少しはっきりした味付けにしていますね。調味料を足して味を濃くするということではなく、旨味や香りをより強く味わってもらえるような素材選びや調理を心がけています。

ーー調理面でとくにこだわったメニューはありますか?

機内でもバジルの香りを楽しんでいただくために、バジルペーストを作るときに液体窒素を使ったことがあります。機内食で使用する場合は、バジルに一度火を通して菌を殺さなくてはならないのですが、そうすると香りが少し飛んでしまうという懸念がありました。

香りを保ったままご提供する方法をいろいろと考えた結果、バジルの葉に液体窒素をどぶどぶとかけて凍らせ、ミキサーにかけることに。風味豊かなバジルペーストに仕上がりました。

メニュー変更は最短10日! 飽きさせないための試行錯誤

ーーメニューを検討するときに、一番重視していることはなんですか?

見た目です。どんなにおいしくても、見た目がイマイチだと総合的な満足度も上がりません。ケーキでたとえてみてもそうですよね。おいしくても見た目がいまひとつのケーキって、ちょっと残念ではないですか?

ビジネスクラス監修メニュー

また、JALとして「和」を演出することも意識しています。海外から日本にいらっしゃるお客さまは和食を召し上がることが多く、期待されている部分でもあるからです。

秋ならば色づいたもみじを、春ならば桜の蕾を添えることで、味だけでなく視覚的にも「和」を楽しんでいただけるように工夫しています。

ーー1つのメニューは何日くらいで変わるものなのですか?

長くて3ヵ月、短くて10日です。特にビジネス利用のお客さまが多い韓国線や中国線は短い周期で変更しています。

ビジネスパーソンのお客さまは、1ヵ月に2~3回同じ路線を利用する方も少なくありません。毎回同じお食事で飽きてしまわないよう、頻繁にメニューを変えているのです。

ーー新しいメニューを次々と考えるのは、かなり大変なのではないでしょうか……?

そうですね。引き出しがいくつあっても足りないです(笑)。でも私ひとりで考えているわけではなく、成田工場と羽田工場に合わせて約100名のシェフがいますから、みんなで知恵を出しあいながらメニュー開発を行っています。

最近は中華のメニューを作るときに、若いシェフが良いアイデアを出してくれました。彼のアイデアをもとに検討を重ねた結果、人気メニューになった料理もあるんですよ!

ーー若いシェフの方も活躍しているのですね。ところで、浜シェフの今イチオシのメニューは何ですか?

私のイチオシは、ファーストクラスのデザートでご提供している「赤紫蘇(あかしそ)のグラニテ」ですね!赤紫蘇の味がスッキリしていて、彩りも味も大好きです。

顔に似合わず甘いものが好きなんです(笑)。

妥協は一切しないから、すべてのメニューが自信作!

ーーもし、今だから話せるウラ話があれば 教えてください!

ウラ話ですか(笑)、そうですね…...。
では、ファーストクラスの監修メニューを作ったときの話をしましょうか。

ファーストクラスで一番の人気メニューは「和牛フィレ肉のステーキ」なのですが、そのステーキの味を超える、「和牛のハンバーグ」を作ろうということになりました。

監修先も私たちも「まださらにおいしくできるところがないか」とこだわり続け、10回以上もプレゼンを行いました。しかし着地点が見えなくなってしまい、このメニューは結局お蔵入りになったんです(笑)。

ーー和牛のハンバーグ、おいしそうです。 お蔵入りは残念でしたが、妥協せずに味を追求されているのだなと感じました。

そうですね。今まで100パーセント満足できていないメニューは、ひとつとして出していません!

ーー最後に、浜シェフがこれから挑戦していきたいことを教えてください!

「お客さまを飽きさせない」というミッションがある以上、私たちは新しいことにどんどん取り組んでいかなくてはなりません。

機内食ならではの制約はいろいろとありますが、それを乗り越えて、料理を楽しみに飛行機に乗ってくださるお客さまの期待に応えていきたいですね。

ーー浜シェフ、ありがとうございました!

すべてが自信作と言い切る浜シェフの言葉からは、機内食への並々ならぬこだわりが見えました。

旅先や機内で印象に残っている食べ物や、おすすめしたいグルメはありますか?Discovaの発見レポやJALトークへの投稿、お待ちしています♪

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  • 赤紫蘇のグラニテ、美味しそうですね…来年、作ってみようかなぁ😋
    (青紫蘇のグラニテとレシピは大して変わらないと想定)

    ビジネスクラスのお料理も、写真を見ているだけで「これはどんな味付けかな~」「たぶん、こういう味付けだけど、素材はどんなの使っていて、どんな味だろう?」と、想像が膨らみます。
    国内線もFなら機内食が出るので、機会があれば乗りたい(機内食を食べたい)と思っています。
  • せっかく、こうして熱意を持って作って下さっているのでね、提供する際にも、細心の注意をお願いしたいです。
    もちろん、ほとんどの場合、そうしてらっしゃるでしょうけれど、ハズレの時もたまにありますよね。

    アラカルトメニューで「あとで食べたいので、お取り置きお願いします」と言っておいたトマトとモツァレラチーズのサラダ、
    数時間後、常温で出されたんですよ。トマトやチーズが生暖かいのって…

    その便では、パンは冷凍?で手でちぎれないほど冷え冷えのカチカチでしたしね。

    シェフの熱意に負けないように、提供時にも愛情を込めてほしいです。
    まあ、99%はきちんとケアして下さってますが😊
  • 自分、今年4回、
    JALファーストに搭乗しましたが、
    ステーキ一度も食べたことないです。
    あれ、自分酒飲みなので、
    和食だと、先付け、お造り、メイン
    なんか、アテが種類多いんですよね。
    お酒のアテになる、洋食コースだと、
    嬉しいです。
    ※個人の感想です。
    今年、ANAファーストでは、
    ステーキ食べましたが、正直今一でした。
    ※個人の感想です。
    ※画像はJAL03便F鱸のソテー
  • 貴重なお話、ありがとうございます。こういう裏方といえる方々のお話、大好きです。機内食がますます楽しみになりました(^^)
  • 約1年前から準備しているとは驚きました!!JALの機内食が今まで以上に楽しみです😊
  • 機内食という制約がある中、いかに私たちを楽しませるか...先日頂いた1食にものすごい時間と労力と愛が込められているのかが本当によくわかりました。ますます機内食が楽しみになりますね❤️❤️❤️
  • どれもおいしそうです!飽きさせないメニューを考えるのは大変だと思います。。
    海外に行ったことない私には、憧れでしかありません!国内線のファーストクラスで機内食まずは食べれたらよいなと思っています!
    機内食試食会やJALロイヤルケータリング工場見学してみたいので編集部の皆様是非企画をお願い致します!
    • 2019/11/23
      青組の機内食工場見学会に以前参加したことあります!JALもあると良いですよね。
    • 私も機内食の工場見学、行ってみたいです。
      青組にはあるんですね。

      JALでも今後、新規イベント等を検討するときには「Discovaメンバー対象で試しに開催してみて、改善点等を洗い出してみよう」みたいにDiscovaが成長してくれたら嬉しいです。
    • 2019/11/26
      ANAスカイホリデーのツアー?みたいな感じで期間限定で売り出されていたんですよね。有料なのですが、ビジネククラスランチ付きorビジネスクラスデザート付きの2つのコースだった気がします。
  • 本当にJALさんの機内食はエコノミーでも期待値を大きく超えた美味しさのことが多々ありますね♥️
    ビジネスクラスのフィレステーキもソースや付け合わせのバリエーションもあって毎回楽しみにしています🌟
    ただ、海外発の便の方がステーキの火の入れ加減がうまいなぁ👍と思うのは私だけでしょうか?この間のフランクフルト発便が最高でした👌👌👌👌

    洋食のパンだけどうにかしていただけると嬉しいですね😆わたしは食べるのが遅いのでカッピカピに固くなって結局食べられません。
    国内線のファーストクラスのご飯がお椀ではなく包んで配膳されるようにパンも乾燥を防ぐために配膳にしていただけると嬉しいです!🙏
  • 海外の航空会社だと、
    メインにごはん、副菜にそば、そしてパンと、炭水化物の三重奏が本当によくあります。
    ああいう機内食は料理長から見てどう思うのか、を知りたいです。
    機内食試食会の時に質問できなかったので。

    又、ああいう機内食を準備する料理長や航空会社には、
    美味しいものを乗客に楽しんでもらいたい、という気持ちは存在していないのでしょうか。

    この記事を他の航空会社の方々に読んで頂きたいです。
  • 機内食試食会、またあると良いですね!
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