国際線に乗るときの一番の楽しみと言ってもいい、機内食!
普段と違った環境で食べるだけあって、旅の印象にも残りますよね。
ところで機内食のメニューは、どのように決められているかご存知ですか?
今回は機内食が提供されるまでの舞台裏を探るべく、ジャルロイヤルケータリング株式会社 総料理長の浜 信彦シェフにお話を伺いました。
浜シェフにこっそり教えてもらった、今だから話せる裏話もお伝えしていきます!
ーー機内食のメニューはどのように決まるのでしょうか?
当社が単独で作る通常メニューと、外部の有名シェフが監修を行うメニューの2種類があり、それぞれ決め方が異なります。
エコノミークラスの通常メニュー
通常メニューの場合は、機内でお客さまにご提供を始める約1年前から企画会議を行います。
路線ごとにコンセプトが異なるので、担当シェフはコンセプトに合わせたメニューを考え、試作を繰り返します。最初の関門は、試食を兼ねたジャルロイヤルケータリング社内でのプレゼンです。「もっとこうしたほうが、インパクトがあるんじゃないか」といった先輩シェフたちからのアドバイスをもとに改良を重ね、 最終的には機内食などのJALの商品・サービス開発を取りまとめている担当者と確認し、決定します。
エコノミークラス監修メニュー
監修メニューの場合も、ご提供開始の1年くらい前に監修先からメニューの提示があるので、それを私たちが機内食として再現し、監修先にプレゼンします。お互いに納得がいくまで、何度も試作を繰り返すので、メニューが固まるまでにかなりの時間がかかりますね。
ーー準備が始まるのは提供開始の約1年前なのですね!
1年前にメニューを決めているのは、実際に機内食を提供する季節と試作をつくる季節がずれてしまうと、使用する食材が手に入らなくなってしまうからです。今から1年先のメニューを考えるのであれば、同じ時期に出回っている野菜やフルーツなどを使えますよね。
食材選びの観点では、できるだけ安定して手に入る食材を使用しています。
食材が手に入らなくなり、他の食材で代用せざるをえなくなると、お客さまがご覧いただくメニューの写真と異なってしまいます。
メニュー写真を見てお料理を楽しみにしているお客さまもたくさんいらっしゃるので、その期待を裏切らないためにも安定供給が可能な食材選びはとても大切です。
ーー普通のレストランと機内食とでは、調理の面でどのような点が異なるのでしょうか?
いろいろとありますが、ひとつは火加減です。例えばフィレ肉のステーキなら、機内で温め直すときに火が通ることを考えて、機内に運び入れる時点ではベリーレアの状態にしておきます。
あとは味付けです。機内では乾燥と気圧の関係で、旨味や香りを感じにくくなるといわれています。なので、通常よりも少しはっきりした味付けにしていますね。調味料を足して味を濃くするということではなく、旨味や香りをより強く味わってもらえるような素材選びや調理を心がけています。
ーー調理面でとくにこだわったメニューはありますか?
機内でもバジルの香りを楽しんでいただくために、バジルペーストを作るときに液体窒素を使ったことがあります。機内食で使用する場合は、バジルに一度火を通して菌を殺さなくてはならないのですが、そうすると香りが少し飛んでしまうという懸念がありました。
香りを保ったままご提供する方法をいろいろと考えた結果、バジルの葉に液体窒素をどぶどぶとかけて凍らせ、ミキサーにかけることに。風味豊かなバジルペーストに仕上がりました。
ーーメニューを検討するときに、一番重視していることはなんですか?
見た目です。どんなにおいしくても、見た目がイマイチだと総合的な満足度も上がりません。ケーキでたとえてみてもそうですよね。おいしくても見た目がいまひとつのケーキって、ちょっと残念ではないですか?
ビジネスクラス監修メニュー
また、JALとして「和」を演出することも意識しています。海外から日本にいらっしゃるお客さまは和食を召し上がることが多く、期待されている部分でもあるからです。
秋ならば色づいたもみじを、春ならば桜の蕾を添えることで、味だけでなく視覚的にも「和」を楽しんでいただけるように工夫しています。
ーー1つのメニューは何日くらいで変わるものなのですか?
長くて3ヵ月、短くて10日です。特にビジネス利用のお客さまが多い韓国線や中国線は短い周期で変更しています。
ビジネスパーソンのお客さまは、1ヵ月に2~3回同じ路線を利用する方も少なくありません。毎回同じお食事で飽きてしまわないよう、頻繁にメニューを変えているのです。
ーー新しいメニューを次々と考えるのは、かなり大変なのではないでしょうか……?
そうですね。引き出しがいくつあっても足りないです(笑)。でも私ひとりで考えているわけではなく、成田工場と羽田工場に合わせて約100名のシェフがいますから、みんなで知恵を出しあいながらメニュー開発を行っています。
最近は中華のメニューを作るときに、若いシェフが良いアイデアを出してくれました。彼のアイデアをもとに検討を重ねた結果、人気メニューになった料理もあるんですよ!
ーー若いシェフの方も活躍しているのですね。ところで、浜シェフの今イチオシのメニューは何ですか?
私のイチオシは、ファーストクラスのデザートでご提供している「赤紫蘇(あかしそ)のグラニテ」ですね!赤紫蘇の味がスッキリしていて、彩りも味も大好きです。
顔に似合わず甘いものが好きなんです(笑)。
ーーもし、今だから話せるウラ話があれば 教えてください!
ウラ話ですか(笑)、そうですね…...。
では、ファーストクラスの監修メニューを作ったときの話をしましょうか。
ファーストクラスで一番の人気メニューは「和牛フィレ肉のステーキ」なのですが、そのステーキの味を超える、「和牛のハンバーグ」を作ろうということになりました。
監修先も私たちも「まださらにおいしくできるところがないか」とこだわり続け、10回以上もプレゼンを行いました。しかし着地点が見えなくなってしまい、このメニューは結局お蔵入りになったんです(笑)。
ーー和牛のハンバーグ、おいしそうです。 お蔵入りは残念でしたが、妥協せずに味を追求されているのだなと感じました。
そうですね。今まで100パーセント満足できていないメニューは、ひとつとして出していません!
ーー最後に、浜シェフがこれから挑戦していきたいことを教えてください!
「お客さまを飽きさせない」というミッションがある以上、私たちは新しいことにどんどん取り組んでいかなくてはなりません。
機内食ならではの制約はいろいろとありますが、それを乗り越えて、料理を楽しみに飛行機に乗ってくださるお客さまの期待に応えていきたいですね。
ーー浜シェフ、ありがとうございました!
すべてが自信作と言い切る浜シェフの言葉からは、機内食への並々ならぬこだわりが見えました。
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