飛行機を操縦し、お客さまを目的地まで安全に運ぶ運航乗務員。「パイロット」という呼び名の方が馴染みがあるかもしれませんね!
以前実施した「JALのお仕事の舞台裏を知るならどの職種がいい?」の投票でも、たくさんの方が興味を持ってくださっていることがわかりました。
そこで今回は、ボーイング777の機長を務めている日隈(ひのくま)さんを取材し、皆さんが気になる仕事にまつわるあんなこと、こんなことを聞いてみました♪
JAL社員が使う専門用語の解説やフライトバックの中身など、他では知りえない運航乗務員の仕事の裏側を一挙大公開!
やはり憧れの職種ですし、どんなフライトでも判断力が必要となる場面が有ると思います、そんな裏話が聞けると嬉しいです、そしてフライト前後の時間に何をやってるのかも興味深いです。
ーー普段はフライトのどれくらい前に出社していますか?
日隈:国内線に乗務する日は、運航予定便の出発時刻の約1時間30分前、ヨーロッパ路線などフライト距離が長い場合は1時間50分前くらいに出社し準備を始めます。まずは制服に着替え、アルコールチェックを行い、航空図などの改訂版を確認したらショウアップ(出社)です。
その後、ブリーフィングルームに移動してブリーフィング(打ち合わせ)を行います。
ーーブリーフィングではどんなことを話すのですか?
日隈:オフィスで行うブリーフィングは、国内線だと機長と副操縦士の2人で行います。専用システムを見ながら天候や飛行ルート、高度などを確認し、その日のフライトの流れや方針、注意点などを共有します。
さらにお客さまのご搭乗前に、機内で客室乗務員と合同のブリーフィングを行います。こちらからは、フライトの概要を説明し、客室乗務員からは、ご搭乗されるお客さまの情報やサービス方針を共有してもらいます。
ーー先ほど「ショウアップ」(出社)という聞き慣れない単語が出てきました。業界用語でしょうか?
日隈:そうですね(笑)。ほかにもいろいろとあって、業務上よく使うのは、チャート(航空図)、レグ(フライト)あたりですね。
空港を3つのアルファベットで表したスリーレターコードで呼ぶのも、航空業界の特徴かと思います。たとえば関西国際空港はKIX(キックス)、ロサンゼルス国際空港はLAX(ラックス)と呼んでいます。
また、予約をお持ちでないお客さまが、空港でその日に搭乗する便の予約、発券をされることをゴーショウ(Go Show)、予約はお持ちなのですが、当日空港にいらっしゃらないことをノーショウ(No Show)と言うのですがこれは普段から使っています。「ゴーショウだけどあの人気店に行ってみようか」なんてね(笑)。
ーーパイロットの制服で気に入っているポイントはありますか?
日隈:着るだけで"5割増し"になるところです(笑)というのは冗談ですが、制服を着るうえで意識しているのは、袖に折り目をつけてピシッとアイロンをかけること。これは先輩からのアドバイスで、訓練生時代からやっています。制服を着ると一瞬で気が引き締まりますね。
制服の肩部分についている金色のラインは、4本が機長、3本が副操縦士であることを示しています。
もうひとつ、機長の帽子にだけ月桂樹の刺繍がつくという違いもあります。
ーーフライトの際に必ず持っていくアイテムを教えてください!
日隈:社員証、ライセンス、パスポート、ビザは必須です。ライセンスやパスポートは有効期限が切れていないか、携帯しているかを毎回ブリーフィング時に一緒に乗務するパイロットと相互確認します。
ほかにはサングラス、手袋、行先別の財布、フライトログブック、iPadなどがありますね。以前はフライトバックに紙のチャートをたくさん入れていましたが、今はほとんどiPadで情報を確認できるので必携です。これらすべて、忘れものがないようにチェックリストを見ながら準備しています。
あとは、空港でお会いするお子さまに配るために、フライトバックのポケットには数種類のシールを入れていますね。
ーー飛行中は機長と副操縦士でどんな会話をしているのですか?
日隈:国内線の場合は飛行時間が短いため、離陸してすぐに着陸のことを話します。フライト距離が長い場合は雲をどちらに避けるか、高度を上げるか下げるかなど、2人でお客さまにとってより快適な経路を考えながら操縦しています。
飛行が安定し自動操縦に切り替えてからは、モニターを見ながらですが「目的地についたら何を食べようか」なんて話をすることもありますよ。
ーーフライトの際に、楽しみにしていることはありますか?
日隈:操縦席からの眺めですね。なかでもわたしは朝日が昇るのを見るのが好きです。地上の2倍くらいの速さで、すーっとのぼっていくんですよ。普段は見られない景色だからこそ、感動しますね。
オーロラの美しさも格別です。見えたら客室乗務員に必ず伝えるようにしています。先日、隣同士の席になったお客さまが2人でワインを注文し、オーロラを見ながら乾杯されたというお話を伺いました。すばらしい景色はコミュニケーションも生み出すのだと思い、とても心温まるお話でした。
ーー運航乗務員になってから、搭乗者として飛行機に乗るときについチェックしてしまうことはありますか?
日隈:機長のアナウンスです!他の運航乗務員がどんな話をしているかを聞いて、参考にすることもあります。わたしは景色のことや季節に合ったお話をさせていただくことが多いです。12月でしたら、「サンタさんにぶつからないように飛行しております」とか「上空で赤と青の光を見つけたら飛行機、赤い光が1つだったらサンタさんです」とか(笑)。とくにお子さまに喜んでいただけますね。
ほんの一部ではありますが、今回は運航乗務員のお仕事の裏側をご紹介いたしました。次回は、「ディスパッチャー」の仕事の裏側をご紹介する予定です。
今後も別の企画で、運航乗務員にお話を聞く機会があるかもしれません。聞いてみたいことがあったら、ぜひコメント欄に投稿してくださいね♪