特集コラム
2022/12/22

ボーイング787型機の現役パイロットへ質問!〜飛行機編〜【trico みんなのQ&Aまとめ】

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2022年4月22日、先進技術で快適性を追求したボーイング787型機はJALで運航を開始してから10周年を迎えました。 tricoでも10周年を盛り上げるべく、787運航乗員部の現役パイロットと協力しQ&A特別企画を実施。
「ボーイング787型機 パイロットへ質問!」を期間限定で募集し、皆さんの質問にボーイング787型機の現役パイロットが回答しました。たくさんの質問投稿をありがとうございます!ご要望にお応えし、今回は飛行機編をまとめてお届けします♪

 

プロフィール

今回皆さんの質問に回答した、ボーイング787型機の現役パイロットをご紹介します。

【経験機種】ボーイング747-400,777,787型機
【好きな滞在先】ニューヨーク
街の活気で自分も元気になります。散歩や食べ歩きすることがほとんどですが、本場のミュージカルを見たり美術館に行ったりして過ごしたりもして楽しみの尽きない街だと思います。
江原機長
 
【経験機種】ボーイング747-400,A300-600,777,787型機
【好きな滞在先】サンフランシスコ
苦しくも楽しい訓練時代を過ごした第2の故郷。来ると落ち着きます。あとはマドリッドやウィーン、ミラノなど今は就航していない場所にもそれぞれに思い出があります。
元田機長
 
【経験機種】ボーイング747-300,747-400,777,787型機
【好きな滞在先】ニューヨーク・パリ
街の風景を眺めながら散歩するのが好きです。
小澤副操縦士
 
【経験機種】ボーイング737-800,787型機
【好きな滞在先】帯広・高松・大分・ホーチミン
737では温泉好きなので、帯広、高松、大分が好きです。787ではベトナム・ホーチミン。東南アジアの力強さと日本では味わえない雰囲気が好きです。
林副操縦士
 
【経験機種】ボーイング737-800,787型機
【好きな滞在先】新千歳・帯広・旭川
春から夏にかけての北海道。新千歳、帯広、旭川はこの時期景色が素晴らしく、アスパラや新じゃがなど旬な食べ物も美味しいため、北海道ステイが入るとウキウキしてしまいます。
橋本副操縦士
 
【経験機種】ボーイング747-400,777,787型機
【好きな滞在先】ホノルル
行きは完全徹夜フライトで仕事はキツイのですが、ビーチや公園を走っていると癒しのエネルギーをもらえます。その他ローマ・パリ・ニューヨークなど歴史ある都市、写真を撮りながら歩くのも好きです。
矢島副操縦士

質問その1:操縦する飛行機は会社からの指示で決まるの?

Q:ライセンスを取得する飛行機は、会社からの指示で決まるものなのでしょうか?もしくは、自身が操縦してみたい飛行機の枠に空きがあれば、手上げ式で意思表示をするものなのでしょうか??
  A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 副操縦士の小澤です。基本的に希望はできないのですが、私の場合はたまたま乗りたかった機種(従来型ボーイング747型機、ボーイング747-400型機、ボーイング777型機、ボーイング787型機)に乗れています。とてもラッキーだったのかもしれません。 A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。乗務する機種について自分の希望を表明することはできますが、基本的に乗務する飛行機については会社からの指示で決まるようになっています。

質問その2:どのようにしてセンターをとって地上滑走、着陸を行っているの?

Q:A350の機外カメラで離着陸の瞬間を見ていて思うのですが、滑走路のセンターライン上に前輪がちゃんと乗っているのですが、機体の左右に寄って座っている状態で、どのようにしてセンターをとって地上滑走、着陸を行っているのでしょうか。
  A:こんにちは。ボーイング787型機 副操縦士の橋本です。 左席、右席それぞれ着座位置で外の見え方は変わってくるのですが、各々車輪がどの位置にあるのかを把握する基準を持っており、例えば「左の太腿の内側をどこに合わせる」であったり「コックピットの◯◯SWITCHの中心にセンターラインを合わせる」であったりといった目安を使っています。またパイロットの訓練では、小型機の訓練時代から“センターラインをしっかり跨ぐこと”を徹底しているので、一般的な感覚として、少しでもセンターラインを外すと気持ちが悪いと感じます。そういった感覚もセンターラインのキープに役立っているのだと思います。 A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。おっしゃるようにパイロットの座っている場所とセンターラインの位置は微妙にずれており、自分がセンターラインに乗ってしまうと前輪や飛行機の中心はずれてしまうことになります。パイロットによってやり方が異なりますが、私は自分とセンターラインの相対的な見え方で飛行機の車輪や飛行機の中心がセンターラインに乗っていることを把握するようにしています。

質問その3:ボーイング787型機は他機種と機体の動き方や操縦の感覚などに違いはある?

Q:B787は、他機種と比べて、主翼の翼端部分が上にそっているかと思います。機体の動き方や操縦の感覚などに違いはありますでしょうか??
  A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 副操縦士の林です。 私が操縦していた前機種がボーイング737-800型機でボーイング787型機が2機種目になるので、その比較しかできませんがお答えします。 主翼翼端部が上にそっているということの影響だけではないと思いますが、ボーイング737型機に比べて確実に飛行機の揺れは抑えられている気がします。 その揺れ軽減のお陰で着陸前のコントロールは安定しやすくなっています。またボーイング787型機は「fly-by-wire」を採用し、私たちの操縦桿の操作を電気信号に変えて飛行機を動かしています(ボーイング737型機はまだ実際のワイヤーがついています)。そのお陰でパイロットの希望する動きを簡単に操縦できるようになっています。 A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。私はボーイング747-400型機、ボーイング777型機、ボーイング787型機と乗務をしてきていますが、ボーイング787型機の特徴として「fly-by-wire」という仕組みが取り入れられており、操縦士の意図通りに飛行機の姿勢を制御できるようになっています。翼端の形状というよりもその仕組みにより今まで操縦した飛行機のなかでは格段に操縦がしやすくなってると感じます。翼端の形状については、翼端渦という飛行時の抵抗となるものを軽減する効果があり、飛行時の低燃費化にとても貢献し、地球に優しい飛行機になっています。私はボーイング787型機の翼の形状が大好きで、外部点検の時にいつも綺麗だなと見とれています。笑

質問その4:ロゴ灯を点けて離着陸する航空機と点けない航空機の違いは?

Q:夜、ロゴ灯を点けて離着陸する航空機とロゴ灯を点けないで離着陸する航空機がありますが、何か違いがあるんでしょうか??※羽田の展望デッキで航空機を見て思いついた疑問です!
  A:こんにちは。ボーイング787型機 副操縦士の橋本です。ロゴ灯を点灯させる場合の効果として、夜間の視認性(管制塔や他の飛行機から航空会社を判別しやすい)やコマーシャル効果が挙げられますが、法律では定められているものではありませんので、各航空会社によって運用方法が違うのかもしれません。私も夕方〜夜間でまだ暗くなっていない時に点灯させるかどうか悩むことがあります。 A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。他の航空会社の決まりについて詳細はわかりませんが、ロゴライトは航空法で点灯が求められているライトではないため航空会社により点灯させるかどうか決められているようです。JALでは操縦士の判断により点灯するようにしています。

質問その5:バードストライクが発生してしまった場合、コックピックで空港に戻る判断をされる状況とは何に問題が生じた時?

Q:空港でも十分な対策を実施されていることをテレビで見たことがあります。それでも運悪く発生してしまった場合、コックピックで空港に戻る判断をされる状況とは何に問題が生じた時でしょうか?エンジントラブル以外の損傷でも引き返すことはありますか?例えば、重要なセンサーやその他重要な機器の障害とかあれば教えてください。
  A:こんにちは。ボーイング787型機 副操縦士の橋本です。多くの場合、エンジンにトラブルが発生した場合に引き返しや、目的地変更の判断に至ります。逆にそれ以外の場合(ほとんどのケースが機首or翼に衝突)は計器類を確認のうえ、飛行を継続することが多いです。エンジン以外の不具合で引き返しや目的地変更のケースはあまりないと思います。(多くのセンサーはバックアップも持っているので、より影響は少ないのだと思います。) A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。バードストライクは航空機にとって大きな脅威となるため、離陸前に操縦士も飛行経路上に鳥がいないことを確認したうえで離陸を開始するようにしています。エンジンに鳥を吸い込んでしまうことが一番の問題となりますが、速度を測定するピトー管という装備や気象レーダーの損傷、フラップと呼ばれる高揚力装置に不具合が発生することもあり、そのような際には引き返しを検討する可能性はあります。

質問その6:カーボンでできた機体、与圧・湿度は他の機体との違いを感じる?

Q:私は実際787は一回しか乗った事がないのですが、カーボンでできた機体・与圧・湿度は 操縦・搭乗して他の機体との違いは身体で感じられますか?
  A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 副操縦士の小澤です。 操舵がダイレクトに機体に伝わる感じです。気持ちがよいですよ。 A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。ボーイング787型機の胴体の多くがカーボンでできているために与圧を強くすることが可能で、機内の空気の状態を地上に近く設定されているため体の負担がとても軽減されていると感じます。今までの機体と違い加湿もされているため、個人的にお肌にもよいと感じています。

質問その7:ボーイング787型機を操縦をして「これは凄い!!」という点は?

Q:初めて質問をさせていただきます。 色んな機種に乗務されて現在は787に乗務されてると思いますが、787を操縦をされて、これは凄い!!という点があれば教えてください。 国際線でも国内線でも787には大変お世話になっております。いつも快適なフライトをありがとうございます。 三半規管があまり強い方ではありませんが、787だと目的地に着いた時の疲れもほとんどなくて助かってます。
  A:こんにちは!ボーイング787型機 副操縦士の橋本です。ご質問ありがとうございます!2021年にボーイング737型機からボーイング787型機に移行したのですが、驚いたことは2つあります。まず静かであること!ボーイング787型機のエンジンは、終端がギザギザになっていて外見上の大きな特徴です。これはシェブロンノズルと呼ばれる形状で、エンジンから噴出される空気の流れを攪拌することで、騒音を低減しています。パイロットは操縦室で喋る機会がたくさんあるのですが、エンジンの音を気にして大きな声を出す必要がありません。(ボーイング737型機の時は割と大きめの声が必要でした。)もう一つは快適であること!炭素繊維でできているため腐食の心配も少なく、機内の湿度を高く保てます。また丈夫なためしっかり与圧ができ、地上と同じような環境のもと操縦に専念できます。(機内与圧は従来の富士山の7合目付近の気圧だったものが、ボーイング787型機では5合目付近の気圧にできるそうです!) 長距離の国際線を飛ぶうえでこれらの要素は大きく、私たち乗務員も目的地に着いたときの疲労感が少なく大変助かっています! A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。ボーイング787型機は747型機、777型機を飛行している時に「こういう機能やシステムがあったらいいな」と思っていたものが全部ついているといっても過言でないくらい、安全に関する機能やパイロットの操縦支援の機能がついています。そういった意味では、パイロットにとっても“Dream Liner”だと思います。なかでもパイロットの思った通りに飛行機が動く操縦性がすごいなと思っています。 A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の元田です。 私はこれまでボーイング747−400型機、エアバスA300-600型機、ボーイング777型機と乗務してきましたが、これまでの機種と比べ一番感謝していることはとにかくいきなり高々度まで上昇できることですね。 特に長距離国際線の場合、重量ゆえにこれまで4発機であるボーイング747型機でも、あんなに大きなエンジンが搭載されているボーイング777型機でも上昇できなかった高度に上がれることにより、特に揺れが予想されている場合において私たちパイロットの選択肢が増えることは非常にありがたいと感じております。 あとは江原さん、橋本さんと同様の意見です。

質問その8:ヘッドアップディスプレイのすばらしいところは?

Q:B787では、ヘッドアップディスプレイを利用していますが、どのような点がすばらしいですか?
  A:ご質問ありがとうございます。ボーイング787型機 機長の江原です。かつての飛行機は、操縦室内にあるたくさんの計器を見て飛行機の状況を確認しながら、滑走路も見て操縦しなければならなかったため、絶えず目を大きく動かしながら操縦していましたが、ヘッドアップディスプレイはその情報が目の前に出ているので、外を見ながら必要な情報を同時に確認でき、操縦の精度が向上しました。また今までは飛行機がどこに向かって飛行しているかをパイロットが推測しながら操縦していたのですが、ヘッドアップディスプレイは飛行している方向が正確に表示されるため、上空で雲を避けたり、着陸する時の操縦がとてもしやすくなりました。 A:こちらで皆さんと会話できるのがとても嬉しいボーイング787型機 副操縦士の矢島です。巡航中も雲の高さや位置の判断の参考にしたりできますが、外(目視)と中(計器)のスキャンが必要なコンポジット・フライトが必要なフェーズでは特に有効で、PFD(計器)だけで飛行している場合に比べ視力調整を行うことなく容易に外のスキャンをすることができるのが素晴らしいです。

いかがでしょうか。「それ気になっていた!」という質問もあったかもしれませんね。
trico「Q&A」では、他にもさまざまなジャンル別に質問ができ、tricoメンバーからの回答が寄せられます。まだ使ったことがない方も、これを機にぜひ質問投稿や回答投稿をしてみてくださいね!

次回は、「パイロット」編をご紹介します♪

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